金融政策入門

金利と経済−高まるリスクと残された処方箋』 

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本書について

本書の著者は、日本銀行の統計調査局企画調査課長や日本銀行金融研究所の所長としての勤務経験を持ち、現在は京都大学公共政策大学院で教鞭をとっている。

そんな著者が書いた本書は、いわゆる「異次元緩和」やマイナス金利といった近年の金融政策を解説しつつ、日本経済の問題とはなにか、それをどのように解決すべきか、ということを論じている。

 

本書における著者の基本的な認識は次のようなものである。

 

自然利子率が趨勢的に低下している日本の現状に照らすと、金融政策は適切な処方箋ではない。

一般論として財政政策は、金融政策よりも適切な処方箋となりうる。しかし、財政発動の余地は国により異なる。

たとえば米国には、まだかなり大きな財政拡大の余地が残されているが、日本の場合は、同時に財政の持続性をどのように担保するか、ということを考える必要性がきわめて大きい。

この間、ヘリコプターマネーのような中央銀行による財政ファイナンスは、それだけでは利払い節約につながらない。

 

ここでいう自然利子率とは、完全雇用を実現できるような実質利子率の水準である。

 

このように指摘したうえで、少子高齢化と正面から向き合うことで高齢化をイノベーションと需要増につなげ、成長の源泉にする必要があると著者は主張する。

少子高齢化こそが、自然利子率の趨勢的な低下を招いている原因だからだ。

具体策としては、希望出生率1.8や介護離職ゼロの実現というアベノミクス新3本の矢における目標設定にコミットすることを提言している。

 

とてもわかりやすく解説してあり、自分のような初学者にも向いていると思うので、よかったらぜひ。