民主主義とはなにか

『市民的自由なき民主主義の台頭』

先日、Facebookを見ていると、雑誌Foreign Affairs Japanのある投稿が目に留まった。

その投稿には、1998年1月号に掲載された論文『市民的自由なき民主主義の台頭』の一部が抜粋されていた。 

いまや尊重に値するような民主主義に代わる選択肢は存在しない。

民主主義は近代性の流行りの装いであり、21世紀における統治上の問題は民主主義内部の問題になる公算が高い。

(中略)

選挙を実施すること自体が重要なのではない。

選挙を経て選出された政府が法を守り、市民的自由を尊重するかどうか、市民が幸福に暮らせるかどうかが重要なのだ。

(中略)

もし民主主義が自由と法律を保護できないのであれば、民主主義自体はほんの慰めにすぎないのだから。

つまりこういうことだ。

市民の自由や幸福といった価値を保証する統治こそが良い統治である。民主主義に基づくことはそうした良い統治を実現するための手段に過ぎない。

なので民主主義に基づく統治が市民の自由や幸福を保証できているのか、その都度点検する必要がある。そして、もしそれらの価値が統治によって保証されていないなら、それは民主主義に何らかの欠陥がある可能性が高い。

 

この指摘が20年前になされていたわけだが、今でも変わらず本質を突いていると思う。 

このような問題意識を共有して、これから思考の整理として、民主主義について考えてみたいと思う。

具体的には、以下のような点について考えたい。

・民主主義とは何か、あるいは民主主義に基づいた統治とはどのようなものか。

・今の日本の統治における問題は何か。

・そしてその原因であるところの民主主義の欠陥とは何か。どうすれば改善できるのか。

 

思っていた以上に自分が民主主義について知らないことに気づいたので、ゼロからゆっくり確認しながら考えてみたい。 

今回は、民主主義とはなにかについて整理する。

 

民主主義とはなにか

民主主義とは何かを考えるにあたって、最初に辞書を引いてみた。(新明解国語辞典 第六版)

民主主義

人民が主権を持ち、人民の意思をもとにして政治を行う主義。

 

さらに、民主と主義についてもそれぞれ調べてみた。

民主

政治運営上の権力が、(独裁)君主にではなく、人民一般にあること。 

まず、民主の意味を見ると、主権とは「政治運営上の権力」なのだとわかる。 

 

主義

1. 自らの生活を律する一貫した考え方と、それによって裏付けられた行動上の方針。

2. 個人個人によって異なる、思想上の立場。

3. 個々人が何らかの制約を受ける、政治体制。 

次に、主義。3の意味での例として、民主主義が挙げられていた。純粋に主義という言葉からイメージするのは2の「思想上の立場」という意味だ。だが、たとえば「民主主義を守る」と言ったときの「民主主義」は、「思想上の立場」というよりも現状の「政治体制」を意味している。

 

最後に、人民の意味についても確認してみよう。

人民

国家・社会を構成する人。国民。

人民という言葉は、普段あまり使わない。ここでの議論では、主に国単位の民主主義の話について考えていきたいと思うので、わかりやすさを重視して「人民」を「国民」と言いかえることにしよう。

 

これらをまとめて民主主義をわかりやすい言葉だけで表現すると、このようになる。

民主主義

国民が政治運営上の権力を持ち、国民の意思をもとにして政治を行う政治体制。

 

とりあえずはこれを民主主義の定義として、話を進めることにする。

次回は、民主主義の分類と、民主主義の具体的な仕組みのひとつである代議制民主主義について、整理しようと思う。

 

参考文献

市民的自由なき民主主義の台頭 | FOREIGN AFFAIRS JAPAN

新明解国語辞典 第六版